PORTFOLIO #2 MAU GLASS WORKS(2007-2011)

2007年春、武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科(通称工デ:こうで)に入学することが出来ました。

受験の時からガラス専攻に興味があり、工デを選びました。工デでは1年生の間は座学や共通の絵画や彫刻、専攻のお試し期間を経て2年生の後期から本格的に専攻に分かれての授業が始まります。
吹きガラスだけでなく、削ったり磨いたり色々な技法をひととおりこなしていく中で自分に合った表現を探し卒業制作に向かっていきます。
私は自由な制作時間は吹きガラスで作品を作っていましたので、そちらをご紹介していきます。

3年生 テーブルウェア課題制作

エナメル絵付をしたカップ

4年生 自由制作 "affect #1 "

教職課程を履修していたのでひと月程帰省して教育実習に行く必要があり、この作品は夏休みに1人で作りました。
焦って仕上げの加工をしている時に作品が割れ、指をけがしてしまいました。後から思うと色々おろそかなまま焦って作業をしていて…。幸い大事には至りませんでしたが、安全第一が身に染みた経験でした。

4年生 卒制前制作 "affect #2 "

 

 

卒業制作 "Recollect"

卒業制作は大きな作品を作りました。色と泡が複雑に入り混じったビー玉を、ドーム状のガラスの中にくっつけています。
4年生になってからは一貫して「感情を浮遊感のようなもので表現したい」という作品を制作していました。ただ、抽象的なテーマを抽象的な形で表現していたため、伝わらない作品にしかならないことにもどかしさを感じていました。
とはいえ、大きな作品を展示したくさんの人に見てもらえたことがとても嬉しくて、達成感はひとしおでした。

ここからはおまけ。他の素材で制作する友人と共同制作した作品です。

金工専攻の友人Tさんの作品。銀?の本体にガラスを吹き込みました。
ガラスは温度の変化によって伸び縮みします(膨張係数という値で表されます)。同じガラス同士でも色によっては引っ張り合い、割れてしまいます。なので、異素材に合わせるということはなかなか難しいことです。
こちらはどのような点を工夫したのかは忘れてしまったのですが、割れずに仕上がりました!ガラスを吹き込む前のカップは、Tさんが長い時間をかけて制作したものだったので本当に緊張しました。

彫刻科の友人Kさんの作品。金魚の目を制作しました。
目を作って欲しいと言われて、普段入らない彫刻科の工房を見学させてもらったのも良い思い出です。

 

ガラス専攻の日常も少しだけ。
現在のムサビは大幅に改修されて、私の頃の工房はなくなってしまっております。

吹き場の前でかき氷

助手さんの大物制作をみんなでアシスタント

先輩の卒制をアシスタント

卒業後はガラスを続けていきたいと思っていたものの、ガラス職人としての就職にはまだ技術的に不安がありました。ガラスライフはまだ始まったばかりで、もっとたくさん作ってみたいという気持ちも大きかったです。
先生方のアドバイスもあり、富山ガラス造形研究所の研究科を受験し合格。全く知らない土地へ向かうことになりました。
次回は富山で制作した作品です。ご覧くださりありがとうございました。

 

※2022.12.19 noteに投稿したものに加筆・修正して投稿しました。

PORTFOLIO #1 美大受験予備校時代(2006-2007)

これまでの作品、作ってきたものを振り返ってまとめてみようと思います。

最初は美大受験の頃のデッサンや絵画を。高校3年生の夏前から神戸元町の初田美術研究所という画塾(関西特有?の言い方でしょうか)に通っていました。
じっくりとモチーフを描く時間は今ではなかなかとれませんので、貴重な時間だったなと思います。
私の中で上出来と思える作品をピックアップしましたので、温かい目でご覧ください。

高3夏期講習(コンクール)でのデッサン

初めて画塾ブログに取り上げてもらえて嬉しかった記憶

 

なわと平面上の正方形

竹かごとアクリルキューブと紙テープ

 

アクリル画 いちごと金魚草

アクリル画 抽象「甘くて美味しい」

アクリル画 抽象「辛くて酸っぱい」

京都市立芸術大学の工芸科が第一志望だったので、抽象的な色彩表現を描くことが多かったです。というか、関東の私立デザイン科の色彩構成に求められるようなテクニックを身につける余裕がなくて…。

大モチーフ水彩画 やかんとバナナと一斗缶

大モチーフ水彩画 トランペットとイーゼルとポスター

こちらは受験直前の作品。(床のパースに苦戦の跡あり)
キャリーバッグに絵の具や鉛筆をたくさん入れて、毎日神戸まで通った日々は大変でもあったけど、これまでの人生の中でも一番楽しかった期間です。

そして、念願叶って武蔵野美術大学の工芸工業デザイン学科に無事合格(わーわー)。
次回は大学生の頃の作品です。ご覧くださりありがとうございました。


※2022.12.19 noteに投稿したものに加筆・修正して投稿しました。

 

Letter to you -買ってくれたあなたへ-

私は吹きガラスでうつわなどを作り、作家として生計を立て…いや、生計を立てようと奮闘中です。
展示会やイベントのたびにドキドキしながら作品に値札を貼っています。作品が綺麗に見えるように精一杯たくさん並べて…私の作るものに、どれほどの価値があるのだろう?そう不安に思う気持ちはなかなかなくなりません。
それでも、この手でゼロから生みだした作品たちを、心から愛おしく思っています。
この道に進むと決めて、父に言われた印象的な言葉があります。

「作品ではなくて、人間性を買ってもらえるような作家に」

作品と向き合っている時間、努力したこと、工夫したこと、私が作ったということに、価値を見出してもらえるようにと。

自分にも作品にも自信はない。迷ったりくじけたり、上手くいかないこともたくさんあります。それでもガラスが好きで、作ることが好きでここまできたということは胸を張ってみようとようやく最近思えるようになりました。
それは、いつも支えてくれる周りの人やこれまでに作品を買ってくれた、見てくれた全ての人のおかげです。
今回は、"買ってくれたあなたへ"というテーマに寄せて私自身のルーツをはじめ、制作を通した出会いや学んだことなどを自伝的に綴ってみることにしました。テーマからは少しかけ離れた部分もあるかと思いますが、お付き合い頂けますと幸いです。

 

これまでのことを

こんにちは。私は、吹きガラスでうつわを作る仕事をしています。
吹きガラスをしています、というと「ああ、あの、ぷーってやるやつ?」と言われますが…まさにそのとおりなんです。
熱々のガラスを吹いて、形を整えて…ひとつひとつ生みだしてゆく。透明で、きらきらして、冷たいけれどあったかい。
私はガラスという素材そのものに魅力を感じています。最初は、本当にただそれだけでした。綺麗だからガラスやりたい。ガラスやりたいから美大行きたい。美大行きたいからデッサンやらねば…

 

ガラスに出会ってから、10年が経ちました。これまでのことを書き留めておこうと思います。

 

2007年春、武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科に(奇跡的に)入学。
順調に美大ライフを満喫し、2年生の後期からガラス専攻になりました。
ひととおりの技術を習得していく中で、吹きガラスが一番楽しいと思うようになりました。出来なかった事がだんだん出来るようになっていくのがうれしかったし、続けていれば必ず上手くなる、という実感もありました。

しかし、何のために作るのかわからないまま制作していました。
なんとなく、美大だから…アートのようなものを作る。
自己の表現としては弱すぎるし、素材の表現として卓越している訳でもないので、出来る範囲内の作品…になってしまっていただろうなと、今となっては思います。

武蔵野美術大学 卒業制作 ”Recollect”(2011)

そして…卒業後もガラスを続けていきたい。でもまだ技術も経験も足りない。
ということで、富山にあるガラスの専門学校に進学することを決めました。

2011年春、富山ガラス造形研究所 研究科に(勢いのみで)入学。
大震災の影響で卒業式にも出席することが出来ず、あわただしくやってきた新しい土地でした。

富山の自然は本当に美しくて、晴れた日のドライブで目の前に広がる立山や、夏の夜のホタルや流星群、冬には全て埋もれるほどの真っ白な雪。
また、学校には思う存分制作に集中できる環境がありました。私はそこで本当に作りたいかたちを考え直してみたのです。

"PIECES"(2010)

これは吹きガラスではなく、ガラスの粉を石膏型に入れて焼成するキルンワークという技法と、ガラスを削って磨くコールドワークという技法で制作しています。ビー玉部分と幾何形体部分は、ガラス用の接着剤で接着しています。

制作のスタイルが変化したことで、表現うんぬんよりも自分の求めるものに正直になり、こだわりを捨てることが出来るようになりました。
同時に、やっぱり吹きガラスが楽しいと改めて思うことにもなりました。

吹きガラスで、本当に作りたいものが作れるようになりたいな…
そんな2年間の富山生活はあっという間に過ぎ、都内の吹きガラス工房に就職するために再び東京へ。

 

2013年春、都内のガラス工房に(運よく)就職。
東京の東側、完成して間もないスカイツリーにほど近い江戸っ子気風あふれる工房です。
都内でも大規模な工房で、制作する製品は国内外の有名ホテルやレストランへと納められるものばかり。ひとつひとつが大切な製品であり、技術力が売り上げに直結する仕事です。
アシスタント業務だけでなく製品の制作を手掛けることもあり、毎日ガラスを扱う環境で経験値がぐーんと上がりました。

学生の頃は、作品を作ること自体が大切で作って発表することがゴールだと思っていましたが、仕事としてガラスに関わるようになってからはお客さまに買ってもらう、使ってもらうことがやりがいになってきたように思います。
製品をお取り扱いしているレストランで、きれいなお料理を盛りつけられたガラスのうつわは、何倍にも輝いて見えました。

生活の中で、身近な存在として使ってもらえるうつわを作りたい。

"Confetti"(2015)

しっくりくるかたち、好きな色、ポップな模様。手仕事だけど、できるだけプロダクトっぽく。
△の模様がぱらぱらと舞っていて、紙吹雪みたいだと思ったのでパーティー気分になれるような特別感をコンセプトに…ということで、もうひとつのデザインを考えました。

"Ribbon"(2015)

プレゼントみたいなリボン模様です。

しかし…この頃は展示会の予定もお取引先も、ほとんどありませんでした。Instagramも知らなくて、作品を発表することもしていない状況。制作するにも費用がかかってきます。このままだと作品を作り続けられなくなるのでは?という現実が目の前にありました。
頑張って美大に入ったこと、東京に来たこと、勉強してきたこと…ようやく、作りたいものが作れるようになってきたのに!

そんな時、iichiのサイト上のとある公募が目に留まりました。少しでも仕事につながる可能性があればと思い、応募してみることにしました。

 

2015年冬、rooms30に(背水の陣)出展。
H.P.FRANCEが主催する、バイヤー・プレス向けの展示会です。
当時、iichi登録作家の出展枠が設けられていて、バイヤーの方に直接作品を見てもらえる機会を頂きました。

通常の展示会とは準備するものが違い、展示作品、展示ブース、リーフレットなど、全てが初めてでどうすればいいのか分からず途方に暮れました。
また、出展料もかかりましたので、仕事につながるかどうかも分からないままの先行投資は重く重くのしかかってきました。

rooms30 会場風景(国立代々木競技場)

当時作成したカタログです。A3くらいでネットプリントに発注、両面印刷を切って折ってホチキスで留めて本になるようにしました。
吹きガラスの作品のラインナップが1つしかないので、アクセサリーや学生の頃のオブジェも詰め込んで間を持たせている…つら…

毎日の仕事終わりの制作、帰宅後の準備で疲労困憊になり開始前に魂抜けておりましたが、展示会では想像以上にたくさんのバイヤーさんに作品をご覧頂くことが出来ました!お店でのお取り扱いや、新規事業への参加などのお話を頂きようやく仕事としての制作が始まるのだと感じました。

 

そこで、本当はroomsまでに間に合わせたかったブランドロゴの制作に動くことに。
以前からひそかに憧れていたハンコ作家・イラストレーターの羅久井ハナさんに
勇気を出してロゴデザインを依頼してみました。(現在はご多忙の為、ロゴデザイン制作はされていないそうです)

作品を見て頂き、グラスから夢があふれるようなイメージが伝わる本当に素敵なイラストに仕上げて頂きました。
羅久井さんの世界観に追いつくようないい作品を作っていきたいと今も思っています。

 

10年間ずっと、ガラスに夢中でした。だけど、それぞれの環境でいつももがいていたように思います。
そんな時に支えてくれたたくさんの人々に私の作品で笑顔になってもらえたらいいな。
そのために作り続けることが今出来ること…かもしれません。

 

 

10年前の私へ
私は10年経ってもガラスを吹いて、作っています。なかなか、上手になったと思う。

※2019.2.8 noteに投稿したものに加筆・修正して投稿しました。